エッセイ
何かおかしい。 肛門に違和感がある。 不思議なもので、これまでにない箇所の、これまでにない感覚にも、人間は明確な確信を持ってそれを感じられるのである。人体の神秘に改めて感心する。 偶然、月いちでメンテナンスをしている皮膚科クリニックと同じビル…
うだるような暑さの中、何となく誰もが開放的になる、楽しく乾いた季節。 染まる頬を沈みゆく夕焼けのせいにできる、甘酸っぱい恋の季節。 甲子園、球児の汗、涙の結晶、自分の青春の全てが詰まった、大切な季節。 Tシャツと短パンさえ履いていればそれなり…
あんたはさ、カッコつけちゃったんだよ、カッコつけてだれも頼らずに頑張っちゃったのよ、良い旦那をやり切ろうとしちゃったのよ、もっとジタバタしなさい、それで良いの 母の言葉に不覚にも泣いた。 世の中は良い人で溢れている。頑張れ、という人も、頑張…
おはよう~ 気怠そうな声が背中の向こうから聞こえて目が覚めた。 あのひとが来たってことはもうそんな時間か。 まだ太陽の光を受け止めきれずにいる目を無理やり開いて顔を向ける。 あ、おはようございます、今日も早いっすね おはよう~ 何、今日も朝まで…
新年。 嬉しいことにバタバタと仕事をさせて頂いていて 徹夜明け朝6時半、スタバにて今この文章を書いている。 ゆったりとした時間が流れる。 テーブルを2つ空けて隣りで、おそらくこの時間の常連の白人のおじいさんが本を読んでいる。 時折マグカップに手を…
大通りから1本入った、人気のない目黒川沿いの道。深夜0時。 AirPodsからはNao Kawamuraの「Sleep your dream」が流れている。 家からジムへと自転車を走らせる。約10分。 本当は家のもっと近くにジムがあるのだが、そこではなくここにした理由は、深夜ひと…
どうなの?それで 最近は好きなことやれてるの? 叔母は、そうぼくに聞いたー 叔母は不思議な人だ。 ぼくから見たら一番身近な成功者で、好きなところに住んで、好きなものを買って、好きなものを食べて生きている。仕事は大変だよ~と笑いながら言うが、誰…
気ままに日々が過ぎてゆく。 気まま、というのは良い言葉だ、と思う。 遠慮や気がねをせずに自分の思うままに行動すること。というのが原義らしい。 まぁ実際に果たしてそうなのだろうか。というところはさておきたい。 さておき、というのができるようにな…
その言葉は突然、ぼくの前に現れた。 とある喫茶店で、珈琲を飲んでいるときだった。 いつものようにパンを3つと珈琲。 先にパンを一通り食べてから、珈琲で一息つく。 最後の一口を飲んで、水を一口。 珈琲と水を交互に一口ずつ。これはいつからかの癖だ。 …
「顔が良いけど性格が悪い」という理由で悩んでいる という話題で大学生の男女が話していた。 ただ単純に、すごいと感心した。 この男、じぶんの顔が良いと確信していた。 すごい会話をしているなあと、ふと目をやって、もっと驚いた。 ぼくだったら確信を持…
じぶんの歳を3で割ると それがじぶんの人生における時間らしい。 そのことばに出会ったのは ぼくが7時の頃だった。 age is just a number. そのことばに出会ったのもまた 確かそのくらい、21番だったと思う。 「じぶんの歳とはなんなのだ」 そう思ったのは朝…
デザインというしごとについて、よく考える。 ぼくは、どんなことで飯を食っているのか。 特段、何かを後世に残したい、とか そういった大きなことは考えていない。 それでも、誰かに何かを提供することでたぶん、ぼくは多少は飯を食えている。 考え出すと止…
朝6時。 いつも通り浅煎りの珈琲を淹れる。 歳をとって、早起きになった。 3時に寝ても、4時に寝ても、6時に一度目が覚める。 すっかりおっさんである。じぶんの中のおっさんの存在にビビる。 いつか人格が入れ替わりおっさんに支配されてしまうのではあるま…
やらなくても良いことがたくさんある。 でも、だいたい、そういうことって好きだ。 靴を磨く時間が好きだ。これができていないと、忙しいということで ぼくは機嫌が悪くなる。というわけで、機嫌が悪くなると、ぼくは革靴を履く。磨くために。 忙しいときほ…
少し間が空いてしまいました。 何かに没頭していないとやり過ごせない心境で、 何か望んで追われるように日々を過ごしていましたが なかなか、そう、かんたんに、片付く気持ちではないもので チリチリとした、というか、ささくれみたいな感情が ずっとひっか…
飲みの場で人から聞いたことが心に残っていることが多い。というか、ほとんどがそれだ。 どんだけ飲み歩いているのか、という話がまずあるが、ともかくだ。「情熱を傾けるものは、好きなものの方が良いよね」とある先輩に、そう言われたとき、何か心にすっと…
先日、こんな話をした。「今そのひとにかけたことばが、そのひとにかけた最後の言葉になったらどうする?」こんなことばを、何かの本のなかで、第二次大戦中、ナチスに本国を侵略され、強制収容所で家族を全て亡くし、ひとりだけ生き残った女性が言っていた…
ばあさんは本当に優しい。姉のことも、弟のことも、ぼくのことも、誰を贔屓するようなこともなく平等に小さいときと変わらず、今も尚愛してくれている実感がある。「ダイちゃん(親父)の子どもだから好きなのよ」とあくまで愛する息子の息子だから、と前置く…
昔、無給無休で働いてたときがあった。 最初に勤めた企業を早々に辞め、デザイン業界に未経験で飛び込んだ。 当然戦力として雇ってくれるところなんてない。 ここで踏ん張ってデザイナーとしてできることを増やして デザインで食えるようになるため。 そうい…
「がんばれ」ということばが、キライ、だった。 そのことばは、 すでにけっこうがんばっているときにしか 掛けられた経験が無かったからだ。 ひねくれた性格に嫌気が差すが わかっていることをいちいち指摘されると どうしても沸点が下がりがちになる。 いや…
あの頃に戻りたいなあと、思うとき。 その「あの頃」ってものは、一体なんなんだろう。 今がいちばん楽しいと思えたら、それはきっと、最&高である。 が、だいたいの場合、そうではないと思う。 何か到達したい高みや、実現したい状態があるから、ひとはたぶ…
基本的に、あまり後悔をしないたちだ。 故に、数少ない後悔のことは ありありと、ものすごく鮮明に覚えている。 そんな中でも特に、 絶対戻りたくないときがある。 いわゆる大企業を辞め、俺は音楽で食っていくんだと いう、絶賛「若気の至り期間」があった…