1人と1匹のいきぬき

背伸びして棚に上げています。二日酔いが常。

私以外、私じゃないの

 

新年。

嬉しいことにバタバタと仕事をさせて頂いていて

徹夜明け朝6時半、スタバにて今この文章を書いている。

 

 

 

 

 

 

ゆったりとした時間が流れる。

テーブルを2つ空けて隣りで、おそらくこの時間の常連の白人のおじいさんが本を読んでいる。

時折マグカップに手を伸ばしカフェラテを啜る音が、ふたりしかいない店内に心地よく響く。

 

1年を通して、この新年の数日だけだろう。

世界中が、ゆったりとときを刻む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新しい1年がはじまった。

 

 

 

 

好きな人と飲んで、銭湯でくだらない話をして笑う。

最近のいちばんの幸せだ。年が変わっても、人は変わらない。今晩も行くんだろう。

 

少しの甘さで、珈琲は充分美味しくなる。

きっと、こういうことは、このくらいで充分だ。

 

 

 

 

 

 一人前でいなければ、とか、支えなきゃ、とか

そういう感情から開放されて、今ぼくはようやくひとりでやりたいことを見つけた。

というか、それをやろうと決めた。やりたいことにしたい、という方が正しいか。

どっちでも良いのだ。

 

いずれにせよ、そこに腹を決められたことはぼくにとってとても大きいイベントだった。

それでも、1年というのはあっという間にに過ぎ去っていった。

この1年も、きっとそうなんだろう。

本当に、今年は立ち止まっている時間なんて全く無い。

 

 

 

 

漫画「バンビーノ」で、伴がこんなことを思う瞬間がある。

 

 

まだまだ落ち着くには早い。

一人前じゃなくて良い、半人前でも良いから、できることを増やしていこう。

 

 

 

自分も、何か、ふとそう感じた瞬間があった。

 

 

 

 

 

 

 

なに、あんた恵比寿になんて住んでるの、ばかだね

あれだ、自分探しだ、そういうのほんときらい、はは

 

 

 

 

 

元職場で一緒だったデザイナーの姐さんと久しぶりに会ったら、楽しそうに笑い飛ばされた。

 

 

 

 

 

あたしも昔仕事やめてカナダ行ったよ、自分探しに

なんにも無かったけどね、あたしは今も昔も川崎よ

 

あんたもさ、恵比寿になんて酒とゲロしかないんだから

ええとね、あれじゃない、このあたりじゃないの、赤羽よ

あんたはそこらへんに転がってるのよ、ははは

 

 

背伸びしたってね、見えないもんは見えないから

いや、背伸びしたって良いのよ、でもね

そんなんで自信なくす必要なくてね

あんたが仕事できないときも、できるようになってからも

あたしはあんたのこととっても好きよ

 

 

バツイチ、アラサーなんていうのはとても褒められたことではないけれどね

そんなこと、どうでも良いのよ、あたしにとっては、ね

きっと、他の人もそうよ、どうでも良いのよ、あんた以外の人にとっては

 

もっともっとがんばんなさい

もっといい人たくさんいるわよ、あ、もちろん奥さんがどうって話じゃなくてね

目の前のこと必死にやって楽しむのよ、そうしてまたこうやって赤羽で飲むのよ

 

 

 

 

そっすね

 

 

 

そうよ、若人、がんばりなさい

 

 

うっす

 

 

 

じぶんは赤羽にあった。笑

 

 

 

 

 

 

 

 

気の知れた友人が、ぼくのことを自由人だと言っていた。

その感覚にすごく違和感を感じたじぶんがいた。

 

 

 

ああ、そんなに自分のこと縛っていたんだな、勝手に。

なにをそんなに縮こまっていたのだ。

 

 

 

 

もっと格好悪く、格好良いことを言い続けて

言っちゃったことを必死こいて実現させていくような

そういうじぶんのほうがきっと、じぶんっぽいんだろう。

そういうじぶんのほうが、ぼくは好きだ。

 

 

 

というわけで、ライスワークを捨てた。

残るはライフワークのみ。新年早々、ヒヤヒヤである。

収入は大幅に減った。でもそれで良いのだ。

飯が食えないかもしれない。

この年になってそんなことやるの?

せっかく積み上げてきたのになぜそんなことするの?

確かにそうだと思う。

でも、それじゃ面白くない。

何者かになりたい。

それでなきゃ、じぶんじゃないのだ。

 

 

 

憧れる人達がいる。

業界の大御所さんもそう、良くしてくれる先輩もそう。

なぜかぼくは、心から人に恵まれている。

こんなじぶんに気を掛けてくれている人がいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

感謝しなさいよ

 

 

 

 

 

 

この前実家に帰り、キッチンで一緒に夕飯をつくりながら母と話していたとき

ふと母が真面目な口調でそう言った

 

 

 

あんたは本当に人に恵まれていると思うよ

 

そうだよね

 

そうよ、本当に

 

ありがたいよね

 

そうよ

 

うん

 

 

 

 

 

 

 

 

お前がやりたいことをやれば良いんだよ

 

 

 

 

そう父は酔っ払って言った。

 

俺なんて周りに流されて流されて、こんな大人になっちまったからな

 

お母さん見てみろ

 

ああいう、言いたいことを言いたいときに言える、自分の発言に100%責任を終える

自分に一本軸のある立派な大人になれよ、俺みたいにはなるな

 

 

親父も立派だと思うけどなあ、子ども三人育てて

 

 

いや、俺は母さんが家にいたから安心して働けていただけだ

母さんが全部やりくりしてくれたんだからな

 

そうかあ

 

そうだよ、そりゃあ

 

でもお前はちょっとひとりでやりすぎだ

もっと頼れ、連絡しろよちゃんと、何かあったら

 

うん

 

 

 

 

 

祖父からも、叔母からも、姉からも、弟からも

昔の音楽仲間からも、地元の友人からも、大学の友人からも、野球部の仲間からも。

 

 

 

同じことを言われた。

ぼくのことは、みんなのほうが良く分かっている。

 

 

 

 

 

 

 

思えば最悪な1年だった。

だけど、最悪も悪くないと思えた1年だった。

 

 

 

まだまだやれる。

ここからだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

祖母はすっかりボケてしまっている。

 

 

ここ最近のことはすぐ忘れてしまう。

ぼくがトイレに行って戻ってくると「ああ、いらっしゃい」とか言うときもある。

だけど、結婚式のことは覚えている。

うまくやってる?とか聞かれる。

 

 

大丈夫だよ

 

 

ちょっと心苦しい。

 

 

 

 

 

 

あの子、本当に可愛いわよねえ、しあわせものよ、本当に

 

そうだね、本当にそう思う

 

 

 

これは、本当だ。

 

 

 

よろしく伝えてね

 

うん、分かった

 

 

 

 

2019年、がんばるのだ。

どこまでやれるかは分からない。

できるだけ、やる。

 

 

 

 

 

 

大変な1年になるんだろう。今から怖い。

 

 

だけど、こうでないと。

全部やるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

店内に客が増えてきた。

もう7時半だ。

 

 

新しい1日がはじまる。

 

新しい1年が、はじまる。

 

 

 

新しい人生が、はじまるのだ。