1人と1匹のいきぬき

背伸びして棚に上げています。二日酔いが常。

Night Swimming

 

大通りから1本入った、人気のない目黒川沿いの道。深夜0時。

AirPodsからはNao Kawamuraの「Sleep your dream」が流れている。

 

家からジムへと自転車を走らせる。約10分。

本当は家のもっと近くにジムがあるのだが、そこではなくここにした理由は、深夜ひとが少ないことと、近くに深夜まで営業しているスターバックスがあるからだ。

 

 

ジムに行かないと筋トレをしないということ自体がもはや怠惰だと、どこかの居酒屋で会ったおじさんが言っていた。

そのおじさんは家の近くの公園で鍛えているらしい。

流石だと思って聞いていると、公園まで車で行っているらしい。

世の中そんなもんである。

 

 

 

体を鍛える理由は、完全に暇つぶしである。

ボーッとしていたくないから。ただそれだけである。

 

 

場所柄、気合の入ったスポーツウェアでガシガシ運動しているお姉さんやお兄さんがたが多い中、ジム着も、いただきもののNIKEのTシャツと、もう15年ものくらいのテロテロのバスパンである。テロテロというより、ペラペラ、いや、ヘラヘラである。

定年を迎えそうなおっさんレベルの見た目への無頓着さで、粛々とイヤホンでラジオを流しながらただひたすらに体をいじめ抜く。悲鳴をあげる体と荒くなる息遣いと裏腹に、頭は空っぽになる。

 

 

今後のこと。

議題でいえばそれだけなのだが、空っぽの頭の中で実に色々なことを考える。

目の前にあるお姉さんのケツを見つめつつ、失礼ながらそんなものは目もくれず、いや、実際目はだいぶくれているのだが

美尻予備軍の皆様には失礼ながら、実際頭の中はこの先やりたいことを必死で考え続けている。

議題の答えは、未だに出ない。

 

仕方がないから大胸筋を鍛えている。

不動産を持っておくか大胸筋を鍛えておけば、将来食いっぱぐれないらしい。

これも大井町の居酒屋でエグザイルみたいなお兄さんが言っていた。

痩せ型からすれば世知辛い世の中だ。

 

 

それでも、ジムで汗を流す時間は、ぼくにとって大切な時間になっている。

ただただ何かをやっている時間は大切だ。

 

 

今チェストプレスを代わった女性が、ぼくのウェイトに更に上乗せしてガシガシ持ち上げている。

さっきまでそれのマイナス10キロでヒイヒイ言っていた自分。まだまだである。

こういうとき、頑張って追いつこうと思う。この気持は将来への希望である。

 

 

 

 

 

 

 

ジムが深夜の1時過ぎに終わる。

そこから、1日の振り返りが始まる。

TSUTAYAスターバックスというのは本当に便利だ。夜深くまでやっている。

ここでも、考えるのは先のことである。

やろうやろうと思って、仕事を言い訳にしてやってこなかったことを最近出してみたら、4つしか無かった。

完全につまらない人である。自分で自分にドン引きした。4つって。

どうせならスティーブ・ジョブズみたいに3つの方が良かったとか思ったりする。

 

 

 

 

運転免許。

体をケアする。

無趣味なので趣味を作る。

欲しいものリストのものを買う。

 

 

 

 

 

旅行とか、そういうものが思い浮かべば良かったのだが

生憎、「今」行きたいところがあまりない。

スーツケースも旅行用バックパックも、旅に使う備品はすべて処分してしまった。

 

 

 

次旅に出るときは、ひとり旅にしようと思う。

思い出を共有する人がいることが、実はいちばんつらいことだとぼくは知っている。

同時に、それがいちばんしあわせなことも知っているし、またそうなりたいとも痛いほど思っていることも、ぼくは知っている。だからこそ、今はひとりが良い。

 

 

 

とりあえず、早速教習所に問い合わせてみた。

歯の矯正を始めた。ボディメンテを予約した。

趣味になりそうなものの体験を一通り予約した。

欲しいものリストの中で、上から適当にいくつか思い切ってポチッと購入した。

ただひたすら飲みにお金を使ったこの数ヶ月に比べたら、いくらか有意義なお金を使った気がする。

 

 

 

ここまでとりあえず行動を起こしてみたら、他にもやりたいことが浮かんできた。

やはり、寝ていないで外に出てみることは大切である。

 

 

 

ディズニーに行きたい。

USJに行きたい。

なんとも、我ながらかわいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前はさ、結局なにがやりたいの」

 

 

 

 

 

その人は、いつも決まってそう言った。

その問いかけに、ぼくはいつも答えられずにいた。

 

 

お前は、いつもひとのことばっかりだな

お前は何がしたいのか聞いてるんだよ

 

 

そのときは、なぜひとのために何かすることがいけないのか、とぶつかったりもした。

でも、今その人がいわんとしていたことが痛いほどよく分かる。

 

 

 

じぶんが生きられるのは、じぶんの人生だけなのだ。

誰かのためにじぶんの人生を使うことは、一聞良いことのように思えるが、

実際のところ、他人への責任転嫁に過ぎない。

 

 

 

 

 

 

 

カラッカラになってみな

何か見えるから

 

Less is More っていうでしょ

あれはホントだよ

 

金がないでしょ

でも家にいたってなんにも変わらないんだよ 

 

 

だから、とにかく歩いてみる。歩いてみると、何かにぶつかる。

そこで何を選ぶか、どこを選ぶか、その連続の中で、じぶんのやるべきことが見えてくる。

 

 

 

 

と、いうわけで、ぼくは歩いている。

案の定、というと失礼だが、何も見えてこない。

 

 

肌寒い季節になってきた。

パーカーを着て出歩いていると、この街の特質上、スーツの方やキチッとした格好の人とすれ違う。

どう思われているのか分からない。どう思われているのか知りたい。

じぶんは何も変わっていないんじゃないかと、不安になる。

環境が変わり、新たな人生が始まった今、特にこの思いが胸をちくりと刺す。

そんな思いから逃げるように、ぼくはまた歩く。

何も変わっていない。その事実と向き合うことが怖い。

でも向き合わなければ前に進めない。

 

 

 

自転車を走らせる時間がとても好きだ。

目的地は特に無い。漕げば進む自転車の仕組み。

自転車はありがたいことにひと漕ぎごとに成功体験を与えてくれる素晴らしい乗り物だ。

 

 

 

 

 

 

 

教習所で、仕事以外では久々にこっぴどく叱られている。

技能のマニュアル運転はかなり難しい。

特にぼくのような理解の遅いコツコツタイプは仕組みが分かるまで時間がかかる。

クラッチペダルとブレーキペダルのタイミングが掴めない。程よいブレーキの押し込みの感覚が分からない。

 

 

教習の最後、まぁ、と頭を抱えながらおばさん教習官が「慣れだから、さ」と言った。まぁ、とそのあとの言葉の間に体感では10秒くらい間があった。恐怖である。

 

 

でも、それもまた良い経験である。

おとなになってこんなに叱られることもないから、意外とこの年になって免許を取るというのは良いことかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マンションの共有スペースで、蔦屋から帰った深夜、

仕事をしているインド人のエンジニアの人と夜食を食べながら話していた。

 

 

その人は会社員だが、スーパーフレックスで、週にPCに40時間ログインしていれば勤怠上は問題ないそうだ。

この時間に仕事をしているなんてすごいね、と感心したが、君こそ昨日この時間ここで仕事していたよ、と突っ込まれた。

24時間以内の記憶が無い。なかなかである。ただ、自分がやっていることにも関わらずひとのそれに感動できるのは得である、ということでこの脈絡のない締まらぬ駄文をそろそろ締めたい。そろそろトイレに行きたいのだ。肛門も締まらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな感じで、世の中は平和だし、ぼくがどんな状態だろうと世の中にはこれっぽっちも影響がない。

それはきっとしあわせなことだし、意外とぼくは自由だし、これからもきっと見えていない希望はあるんだろう。

 

 

 

 

あとどれくらい、じぶんがひとりであることに気づいて落ち込むのかは見当もつかないが

それなりにまだ楽しいことはきっとあって、きっとそれを楽しめるじぶんが戻ってくるんだと信じたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何かに没頭するとき、じぶんを大きく突き動かすのは何なんだろう。

この問いに対する個人的な答えは、何かから必死で逃げたいときだと思う。

 

 

ぼくはすべての自信を無くした、何者でも無くなりそうな自分をーいや、もう分かっているー

何者でも無いじぶんから逃げることに必死だ。

 

 

 

お前は、いつもひとのことばっかりだな

 

 

 

小骨のように、胸に刺ささったまま取れないこのことばが、ぼくを今日もこの街に誘う。

酒でいくら押し流しても、奥の方でぶらぶら引っかかったままだ。

 

 

じぶん、とは何なのだ。一体。

 

 

AirPodsからはNao Kawamuraの「Night Swimming」が流れている。

レーニング後というのもあってか、この曲の通り、気だるいような、夢みたいなふわふわした感覚の中、

深夜特有のピリッとした寒さが、いよいよ本格的な冬の始まりを予感させた。